ある中年看護助手と保護犬の婚活生活

我が家に来たときから直腸末期癌の高齢保護犬と、ずーっと派遣で事務職と医療事務、看護助手をやっていたが正職員の看護助手になって、今度は無謀にも45歳で婚活を始めた話。

借金のない男 その2

お互いの身の上話が終わっても、会話は続く。
借金さんは電話していい?と毎日のように電話だが、彼は基本的にLINE。
それが私には良かった。
借金さんとの電話は楽しかったが、長いし生活のペースが乱れて少しストレスだった。
(それは最初から伝えていたが、それでも押し切られていた)

LINEのやり取りも、昔付き合っていた人みたいに、毎朝「おはよー」とかはなく、昼休みとか帰宅してから、世間話。
私は返事のしようがない挨拶とか報告LINEが苦手なので、その点もありがたかった。


さて、ガツガツ行けないのでという彼、LINEから数日後には「今週末会えないか」と積極的。
本当にどの口がガツガツ行けないと言っているのか…と思いつつ、既にかなり好意を抱いていたのでOKした。

待ち合わせのため、目立つ服装がいいかな?と提示した私の衣装候補は、A.B.C-Zファンお馴染み?の海老視力検査Tシャツ。
「それめっちゃいいやん!」と返信が来たが、初対面の人に注目を浴びせるのは申し訳ないので、無難に赤いTシャツで行くことにした。
ていうか、海老Tシャツでもええんかい!
と、ちょっと嬉しくなる私。


余談だが、アプリでも紹介でも、初めて会う人には普通、それなりの格好というものがあり、スカートはマスト、少し女子寄り(ピンク寄り)で行くのが普通とされる。
しかし今回の婚活に関しては、私は特に力が入っていないのと、もう今更女子寄りにしても、維持できないようなことはしない、と決めていたので、相手に「スカートでお洒落じゃなくても大丈夫?」と了解を取って、Tシャツとジーンズで行っている。
相手も「普段の姿が見たいからお互いそれでいこう」と言ってくれた。
(これは借金さんも同じ)


さて、待ち合わせで相手を見た瞬間、まず
あ、身長もってたな
という以外は、とても好青年。私より2つ上とは思えない…若っ!
転勤で東京に来たばかりなので、お茶する場所とか考えていたが、相手はサクサク連れて行ってくれた。
おお、ちゃんと考えてくれてたのか。
しかもご飯でも甘いものでも大丈夫な店。


話はとても盛り上がった。
借金さんは私との共通点が多いことを凄く強調して喜んでいたが、彼とはそれぞれの話を普通にしていた。
共通点は関西出身と同じ業界にいたことがある、あたと、私の実家の街でも転勤でいたこと、かな?

でも話は今の仕事を面白く話してくれたり、私も辞めた仕事の話をしていた。あとは互いの家族の話とか。
あっという間に90分がたった。

「じゃあ、出ましょうか」

え?もう?
場所変えるのかな?
と、思いつつレジへ。40過ぎてからのデートは割り勘が当たり前だったので、お金を出そうとすると、私が店から出された。
結局、一円も払わせて貰えず、御馳走様です…と。
うわあ、久々に奢って貰った!1000円位だけど、めっちゃ嬉しい!
二軒目は私が出そう。

そんなことを思いながら、店の前でいると
「じゃあ、今日はありがとうございました。凄く楽しかった」
えーっ?!
帰るの?まだ90分やで?もう一人会う約束とかあるの?!
慌てた私は咄嗟に、次の約束を口にした。
向こうも、お願いしますと言っている割には、足がもうエスカレーターに向かっている。
そして最後に、
もし駄目だと思ったら、LINEとかもう返信しなくていいですから!
と、言い残して、風のように去っていった。



え、私新宿の真ん中に置いて行かれた…
【続く】